2010年11月25日木曜日

女王陛下のアルバイト探偵 ハードボイルドを軽く 大沢 在昌 堺市の中心で?を叫ぶ

女王陛下のアルバイト探偵  講談社文庫/解説 井家上隆幸
シリーズ第3弾にして初の長編。前2作を読んで『長編だったらどんな風だろう』と思っていたので、読む前の期待度は大きかったです。
短編だとどうしても隆・涼介親子のドタバタ劇と言った雰囲気から抜け出せない部分もありましたが、長編と言う事で今までの軽いノリを残しつつ、かなり大掛かりなハードボイルド作品になってます。
物語は、冴木親子の元に、日本への留学の下見として来日する東南アジアの島国・ライール王国の17歳の王女様の護衛が依頼される。
しかし留学と言うのは嘘で、本当の意味は別にある事を知る。
命を狙われる王女を守る隆は、次第に王女に惹かれていく。
立場の違いから思いを伝える事は出来るはずもないのだが、無事に護衛が終わった日本滞在最後の夜気持ちを伝えようとする。
が、ここで王女は誘拐されてしまう。
事件は日本を離れてライール王国に舞台を移し、親子の仕事も終わりを迎えるが、二人は男のけじめとしてライール王国に向かう。
ライール王国に入ってからのストーリーは、今までの軽いノリのドタバタ劇が一転し、『新宿鮫』にも通じるような、ハードボイルドな仕上がりになっると思います。
また、シリーズで読む場合、やはり主人公の心の成長や変化を追う楽しみもあるので、この作品で隆の精神的成長が見られるのも嬉しいところ。
これは長編になったお陰と言うべきでしょう。
ただ、舞台が海外(架空)なだけあって、やたら拳銃とか撃ちまくりなのは如何なモノかと。
一応、隆は高校生だし。
必要ない殺しはしないと言いつつ、結果としてバタバタと死人が出てるもちょっと納得いかないような…そんな感じです(もしかして直接弾を撃ち込まなければOKとか!?)。
でも、そこを除けばストーリーに宗教を絡ませたりで、なかなか興味深い部分もあって、結局は一気に読んでしまった作品です。

堺市の中心で?を叫ぶ