2010年11月25日木曜日

アルバイト探偵・調毒師を捜せ ハードボイルドを軽く 大沢 在昌 堺市の中心で?を叫ぶ

調毒師という死亡期間を、きっかり時間、年単位で、指定できるという 破天荒な設定には、驚かされた。
この小説では、リュウ君の「心情」が語られているのではなく、リュウ君の語りたいことが語られているに過ぎない。
随分軽い読み物ではあるが、やはりハードボイルドなのである。
主人公は人一倍饒舌ではあるが、いちばん大事な事は語らない。
だからしきりにこ「この不良親父は」とか、「ヤクザ親父」とか言われているリョウ君の「親父」に対する感情は、「地」の文とはそうとう違うだろうという事も容易に感じることが出来る。
リュウ君、この親父の事を男として、仕事仲間として、そして「肉親」として尊敬し、愛している事がいろんなところから見え隠れする。
それを親父にも読者にも照れて言わない所がまた「可愛い」のではある。
本当の心は、語られず、軽口、悪口 で、文章が構成されているのに、本当の心を感じさせるところが、上手だと思う。
アルバイト探偵・調毒師を捜せ  講談社文庫/解説 香山二三郎
アルバイト探偵シリーズの第2弾短編集。
物語は、父・涼介の前に金髪の女が依頼に現る。
汚い手ばかりを使う女を嫌う涼介は依頼を断るが、それを見越して女は涼介に見付からないように毒を盛る。
仕方なく依頼を受け、調毒師のタクスを捜し始める。
リミットは48時間(『調毒師を捜せ』)。
印象は、前作よりもほんの少しだけ裏の世界を深く描いていますが、それでもテンポも良く軽く読めます。
隆のふざけた言葉や行動からも、あまり緊迫した雰囲気は感じません。
そして、このシリーズで重要な事のひとつに隆の出生の秘密があります。
この秘密に触れる作品『アルバイト行商人』が収録されています。
このサブストーリーを知ってると知らないとでは、これから続きを読む上で面白さが少し違ってきます。
なので、この作品はどれから読んでも面白く読めますが、やっぱり順番通りに読む方がお薦め出来ます。
シリーズ通して読むと、次第に隆の心の成長に触れられます。
最後の頃は、結構カッコイイ男になる隆ですが、この辺りではまだまだやんちゃな男の子と言う感じが抜けず、なかなか微笑ましい雰囲気です。

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