2010年11月26日金曜日

葛乃葉物語-2 恋しくば 尋ねきて見よ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉 堺市の中心で?を叫ぶ

保名は早速近くの医師を招き手当てを致しましたが
其の夜から発熱が甚だしく枕も上がらぬ始末でした。
保名は葛乃葉の姿が目の先にちらつき、
何人の娘であろう…
早く快くなってお社に詣ったら又会うこともあろう、
あの娘も毎日お社に詣でるのであろうか…
など 思いは信太の森へ通うのでした。


鶯の 声なかりせば 雪消えぬ
山里いかて春を知らまし


今までは家の再興と云うことが一心になって
女のことなど考えてもみなかった保名も、
葛乃葉の姿を見てよりその事ばかり思いつめ
心は信太の森へ飛びつつも自由にならぬ我が身を
腹立たしく思うのでした。

それからニ・三日した或る日の夕暮れ時
意外にも葛乃葉が見舞いに来て呉れました。
葛乃葉は「女手が無くては何かと不自由と思いますれば
暫く泊まって御手伝ひ致しましょう」との事に
保名の喜びはいかばかり、
感謝の言葉もまともに口へは出ない程でありました。
医師の手当てと葛乃葉の、痒い所に手の届く介抱に
日一日と快方に向かい今は殆ど全快に近づきましたが
葛乃葉は帰ろうとはいたしませんでした。


「それ男女和合は天地自然の理にて森羅万象何ものかこれなからむ」
保名と葛乃葉も互いの心が通じ合い
いつしか離れられぬ仲となり夏去り秋去り、
その年の暮れには葛乃葉は保名の種を宿し
妊娠の身となつておりました。


「歳月とは流れる水の如し」とか
保名と葛乃葉の間にもうけた一子、
童子丸(後の安倍晴明)は疱瘡も無事に済み
早や五つの春を迎えたのです。

堺市の中心で?を叫ぶ