不思議の国のアルバイト探偵 講談社文庫/解説 吉野仁
シリーズ第4弾長編作品。
物語は、ある日隆の前にインテリ風の男が現れる。
その男は、父・涼介の兄らしい。
そんな時、涼介の昔の同僚・島津から、男が島津達に接触を求めていると連絡を受ける。
何も言わず出掛けて行く涼介を不審に思う隆は、家庭教師の麻里と一緒に監視を始める。
そして、男を撃とうとする涼介を発見し阻止しようとした時、車に跳ねられてしまう。
目を覚ました隆の目の前には、居る筈の無い妹や母親、自分の家があった。
周囲の人々は、自分が元からこの世界の住人のように振舞っている。
創られた嘘の環境に戸惑う隆だが、次第に自分の置かれた境遇を探っていくうちに、驚くような大規模な組織に関係してしまっている事を知る。
隆は、この世界から抜け出す事は出来るのか!?前作の『女王陛下のアルバイト探偵』の雰囲気を受け継いで、更にパワーアップした印象の作品。
ストーリーは、あるはずの無い世界(不思議の国)から、隆はどうやって脱出し謎を解決するのかを追ってます。
それと同時に、今まで物語中でもあまり(涼介の口から)語られる事の無かった涼介の過去や、家族について触れられています。
父親の過去を知り、更に精神的成長を見せる隆の視線から語られるストーリーは、この作品で親子と言う関係よりも男同士と言った感じの関係へと変化しているように感じます。
私的には、このシリーズで一番面白かった作品です。
しかしまぁ、ここまで大掛かりな話しになってくると、『オヤジの手伝いで探偵のアルバイトしてま~す』とは言えない雰囲気ではありますけど。
でも、文句なしに面白い作品です。『不思議の国』の表現もお気に入り。