2010年12月3日金曜日

陰陽師   夢枕獏 第一巻 短編集 堺市の中心で?を叫ぶ

'86~'88年、オール読物他に掲載された、安倍清明の主人公の話

「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」
陰陽師の説明、安倍清明のひととなりが、最初に書かれている。
源博雅朝臣が安倍晴明の屋敷を訪ねたのは水無月の初めである。
しばらく都を留守にしていた晴明は高野で坊主と呪について話をしてきたという。
博雅にはわからない。
晴明は呪とは名ではないかというようなことを思いついたといった。
ますますわからない。

晴明が留守にしている間に壬生忠見が死んだ。
歌合わせで負け、やせ衰えて死んだという。
その怨霊が清涼殿に出るそうだ。

その話とは別に、博雅は五日前の晩に帝が大事にしていた琵琶の玄象が盗まれたといった。
だが、一昨日の晩に博雅はその音を聞いたという。聞いた場所は羅生門であった。
晴明は博雅と一緒に羅生門へ行った。
二人と一緒に法師の蝉丸がついていった。
羅生門の上からは異国の言葉が聞こえてきた。
天竺の言葉だと晴明は言う。その者は漢多太と名乗った。
すでにこの世の者ではない。
漢多太は玉草という女官を連れてきたら、玄象を返すという

「梔子の人」
皐月も半ば。源博雅が土御門大路にある安倍晴明の屋敷を訪ねた。
博雅の知り合いの武士に梶原資之というのがいる。
出家して寿水と名乗っている。
それが八日ほど前からあやかしに悩まされている。
女のあやかしだ。
女には口がなかった。
晴明は懐に入れた一枚の紙片を女に見せた。
女の瞳に喜びの色が現われた。紙には「如」と書かれていた。

「黒川主」
文月。鵜匠・賀茂忠輔の孫娘・綾子に妖異があった。
何かに取り憑かれたらしい。

忠輔は綾子の尋常でない光景を目の当たりにしたのだ。
全裸で堀の中で鮎を口でくわえて食べている...。
忠輔の前に黒川主と名乗る男が現われた。
男が帰ると綾子は昨夜のことを覚えていないという。
その中、綾子の腹だけが大きくなっていった。
たまりかねた忠輔は智応という方士に相談をした。
一度は黒川主を捕まえたものの、逃げられてしまう。
そして、安倍晴明のところに話がやってきたのだ。

「蟇」
安倍晴明が源博雅を誘って外出した。蟇だという。
四日ほど前、応天門にあやかしがでた。

魔霊を押さえるための札が破かれ、あやかしがでるようになった。
あやかしは子供だという。
晴明と博雅は陰態という、この世のものならぬ世界にいた。
そこで博雅が見たのは百鬼夜行であった。方違によってやってきたのだ。
ここで、晴明はあることを知りたかったのだ。
そして応天門に向かった。

「鬼のみちゆき」
それを最初に見たのは赤髪の犬麻呂という盗人だ。
牛車に乗った女の鬼だ。
左右には二人の影がある。内裏に行くと言ったそうだ。
もう一人見た者がいた。
藤原成平という公家だ。

牛車の女は七日かけて内裏に参上すると言った。
ということは、明後日には大内裏の朱雀門の前に牛車は来てしまうことになる。
安倍晴明と源博雅は事前にこの牛車を見に行った。
そして、博雅の一言で晴明はあることに思い当たった。
当日、晴明は博雅に帝へある言付けと願いを頼んだ。

「白比丘尼」
安倍晴明が源博雅に人を五、六人は切り殺したことのある太刀を持ってきて欲しいと頼んだ。
雪明かりの中、女は立っていた。

晴明に三十年ぶりだという。
晴明は女に禍蛇という名の鬼を追い払う法を始めると宣言した。
結跏趺坐した女の芦の間から黒い蛇が出てきた。


6編。
安倍清明と源博雅朝臣のかけあいが妙。 7年後に第2巻刊行。

「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」は今昔物語の一編を題材にしたもので、
後に歌舞伎の脚本のベースとなる話。

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堺市の中心で?を叫ぶ