2010年12月13日月曜日

探偵ガリレオ  東野圭吾 探偵ガリレオシリーズ第1弾。

1998年に刊行した推理短編小説集。テレビドラマ『ガリレオ』の原作。

天才物理学者・湯川学が、大学時代の友人である刑事・草薙俊平の依頼を受けて、一見超常現象とも取れる不可解な事件を科学によって解決していく

古くから推理小説においては、「世間において、あまり一般的ではない科学技術を駆使したトリックは使用しない」という#トリックにまつわる暗黙の了解|暗黙の了解が存在するが、本シリーズではこれを意図的に破っている。





第一章・燃える(もえる)

「花屋通り」と呼ばれる人通りの少ない通りで、局所的な火災が発生し、たむろしていた若者が焼死した。
焼け跡から変形したポリタンクが見つかったこと、また、周辺にガソリンの臭いが充満していたことから、
何らかの弾みでポリタンクに火がついたとして捜査が始まるが、同じ現場に居合わせて怪我を負った連中が、
被害者の後頭部から突然火が上がったと証言するなど、火災が発生した原因については手がかりがつかめない。

「目の錯覚」「少年たちが火をつけた」という意見も捜査一課にある中、マスコミの唱えたプラズマ説を検証するため、
草薙は大学時代の友人、湯川の元を訪ねる。
現場を再び訪れると、一人の少女に出会う。
その子は事件当日、転んで怪我をしたのを草薙が手助けした際、「赤い糸が見えて、それを探していた」と話していた。
その言葉に興味を持った湯川は、ある工場に目をつける。

前島一之…町工場・時田製作所に勤める従業員。口が聞けない(唖者)。読書と音楽を好む。
金森龍男…前島の親友で、同じアパートに住んでいる。
          また、同じ工場に勤めているが、実はもうひとつ、あることをボランティアでやっていた。
          大声で騒いだり、ゴミを散らかすなど評判が悪い連中のことを憎んでいる。
山下良介…事件の被害者。
向井和彦…山下同様、現場で騒いでいた少年。
          仕事を辞めて親の元で暮らしているが、口うるさいのにうんざりして仲間とつるんでいた。
          事件発生時、煙草を吸っていたが、自分が火を点けていない事を主張している。

第二章・転写る(うつる)

草薙は中学生の姪の文化祭に出席するが、そこで奇妙なものを見る。
「変なもの博物館」と称された陳列品の中に石膏で固めたデスマスクがあり、草薙は胸騒ぎを覚える。
そして、血相を変えこのマスクを見る女性がいた。聞くと、この夏に行方不明になった女性の兄に酷似しているというのだ。
デスマスクを作ったのは、この学校に通う生徒。二人は偶然、自然公園にある池でアルミ製のマスクを拾い、
デスマスクを作ることを思いついたのであった。

そしてほどなく、この池からマスクの顔の主である男性の他殺体が発見された。
しかし、なぜ現場にマスクがあったのか、どのように生成されたのかは手がかりがつかめなかった。
そこで草薙は人体発火事件を解明した友人の物理学者・湯川を訪ねる。湯川は実際に池を訪れ、
ある自然現象によってマスクが作られたと考える。
一方、事件の方は、容疑者らしい人物をリストアップするも、その人物には被害者が失踪した日に海外へ旅行に出かけている
というアリバイがあった。

柿本進一…事件の被害者。歯科医。
柿本昌代…進一の妻。実は秘密を抱えている。
柿本良子…進一の実妹。保険会社に勤めている。進一の顔をしたデスマスクに動揺を隠せなかった。
小野田宏美…良子の学生時代からの友人で、中学の音楽教師。デスマスクが進一の顔をしていることにいち早く気づいた。
山辺昭彦、藤本孝夫…中学校の生徒。
          マスクを池で見つけ、デスマスクを作った当人。「鯉が釣れる」と友人にかつがれ、この池で釣りをしていた。
笹岡寛久…パソコンの棚卸をしている事務所で働く。被害者に競走馬の共同購入の話を持ちかけていた。
          また、多額の借金を抱えていたが、この夏以降に返済されている。

第三章・壊死る(くさる)

スーパーマーケットの経営者が浴槽に浸かったまま死亡しているのが、その息子によって発見された。
死体の胸には奇妙な痣が出来ていたが、解剖した結果、痣になっている部分は細胞が完全に壊死していた。
死亡した人物からは薬物は検出されず、また、感電死してできる痣でもないことから、死因を特定できず、
捜査一課も手が出せなかった。
手がかりをつかめないまま草薙は湯川を訪ね、この人物が行きつけにしていたクラブに足を運び、
ご贔屓にしていたというホステスに目をつける。

このホステスの女は、亡くなった人物に多額の借金を肩代わりする見返りに同居を迫られていた。
この状況を避けたいと考えていた彼女は、同僚の男に冗談で殺人の依頼を持ちかける。
最初は困惑してその場を去った彼であったが、その後電話で「絶対に病死にしか見えず、
仮に他殺だと分かってもその手段が分からない。世界で前例のない」殺害方法を女に提案する。

内藤聡美…クラブ「キュリアス」のホステス。しかしこれは夜のバイトで、昼間は東西電機埼玉工場にて事務を担当している。
高校卒業後に新潟から上京したが、ブランド品に依存してしまい、カード破産寸前になっていて、被害者からは多額の借金をしていた。
田上昇一…聡美の同僚であり、夜の顔を知っている。聡美を溺愛し、つきまとっていて、新潟に戻って結婚する事を考える。
          聡美のためなら何でもやる男。今回の殺害に用いているあるものを管理している。
高崎邦夫…被害者。スーパーマーケットの経営者。しかし、裸一貫から立ち上げたため金銭面では汚いことをしてきた。
          吝嗇家で家の金にはケチをつける一方、聡美につぎ込む金は惜しまなかった。このため恨みを多く買っていたという。
高崎紀夫…邦夫の息子で死体の第一発見者。
          父に憎悪を抱いており、死体発見時にも「都合のよい事が起きた」としか考えていなかった。
河合亜佐美…クラブの先輩ホステス。聡美の夜の仕事仲間。
橋本妙子…聡美の昼の仕事仲間。聡美の噂をあれこれ聴いているが、水商売をしている事は知らない。

第四章・爆ぜる

三鷹のアパートにて、男性が撲殺されているのが発見された。
この部屋から帝都大学理工学部脇にある駐車場の写真が見つかり、捜査に当たっていた草薙はその足で第十三研究室を訪ねる。
そこで湯川は、一週間前に湘南海岸で突然火柱が上がり、泳いでいた女性が爆死した事件について学生と議論を交わしていた。
これは管轄の神奈川県警でも原因を特定できず、捜査は難航していた。

一方、草薙は殺害された男性が8月30日に大学を訪れ、教授の車を尋ねていたことを聞く。
また、被害者は1ヶ月前に勤めていた会社を突然辞めていたが、大学の人物からは有力な情報を得ることができずにいた。
捜査が暗礁に乗り上げようとしていたとき、草薙は被害者の部屋から海岸近くにある喫茶店のレシートを発見する。
それは女性の爆死事件当日のものだった。そして、この女性の経歴を調べるうち、2つの事件につながりがあると考える。
また、湯川も海岸を訪れ、爆発の正体を突き止めようとする。
しかし、事件はまだ終わっておらず、さらにもう一人の命が狙われようとしていた。

藤川雄一…アパートで殺害された被害者。帝都大学理工学部エネルギー工学科出身。
          7月に、勤めていた「ニシナ・エンジニアリング」を辞めていた。
          熱工学の研究に取り組んでいたが、4月に別の部署に配置転換されている。
松田武久…帝都大学理工学部エネルギー工学科出身。第五研究室助手。
          湯川とは同期。以前、藤川には研究に協力してもらっていた。
梅里律子…湘南海岸での爆発事件の被害者。一年前まであるところに勤めていた。
梅里尚彦…律子の夫。会社員。
横森…帝都大学理工学部エネルギー工学科第五研究室教授。
          「ニシナ・エンジニアリング」の技術顧問であり、藤川を推薦した。
木島文夫…帝都大学理工学部教授。理工学部のドンで、向学心のある学生が受けたがる教授の一人。
          藤川の受講プログラム変更を認めなかったことがある。

第五章・離脱る(ぬける)

7月25日、マンションの一室で女性の絞殺体が発見された。
検証を行った草薙は、現場にあった名刺から、被害者が殺害された22日に自宅を訪れたとされる男に話を聞く。
すると、男は相手の希望で名刺に書かれていた前日に伺い、事件があった当日は体調が優れなかったため、
川の近くに車を止めて休んでいたと答えた。
しかし、被害者宅近くの住人が、事件当日に男の乗っていた車を家の前で見たと証言。
男は容疑者として任意で聴取を受けることになる。
それでも当日のアリバイを主張するが、目立たない場所に止めたとあって誰も証人が現れない。
この男が真犯人……その空気が流れる中、一通の手紙が捜査一課に送られる。
それは、手紙の主の息子が河原に止めてある男の車を見たというものだった。
ただし、その方法が幽体離脱によるものだというのだ。手紙にはそのとき描かれたとされる絵も同封されていた。

その少年は事件当日、部屋で休んでいたが、突然体がふわふわして、部屋の外の景色をそのまま絵に描いていた。
その不思議な絵を見た手紙の主は当日に仕事仲間にもこのことを知らせる。
また、少年の部屋の前には工場の大扉があり、常にしまっている状態で普通の状態では見える位置にはなかった。
幽体離脱は本当に起こったのか。捜査一課が混乱する中、間宮係長の命で草薙は湯川の元を訪ねる。

栗田信彦……保険会社の外交員で、今事件の容疑者とされている人物。気が弱い。
長塚多恵子…被害者。栗田とは上司を介して付き合いを持っていた。
            お見合いの話もあったが結局破談になっている。その時の関係で栗田の保険会社に加入していた。
上村宏………フリーライター。妻とは離婚し子供一人と暮らしている。今回の現象を記事にして、マスコミに公表する事をも目論む。
          ヒステリックになりやすい。
上村忠弘……宏の息子で、幽体離脱を起こしたとされる人物。生まれつき体が弱く、学校を休みがち。絵を描くのが得意。
竹田幸恵……忠弘のクラスメートの母親で、パン屋を経営している。夫は事故死していて彼女も子供と二人暮し。
            宏に気があるが、この事件で有名になるのが気に食わない。

堺市の中心で?を叫ぶ