「月琴姫」
源博雅が眠っていると、真夜中に人の気配が。
よく見ると、そこには若い女性がいた。
服装は平安朝ではなく、唐(中国)風でもなく、
天竺(インド)風で、二十歳くらいの美しい女性だった。
博雅が話しかけるが、女性の唇が動くも声は聞こえない。
そして寂しそうに姿を消す…ということが5日続いていたのだった。
原因は何か、女性が何を伝えたいのかを知りたい博雅は、晴明に事態の解決を求め、晴明は博雅の屋敷を訪ねるのだが…。
博雅に「沙羅」と名を付けられた阮咸が、博雅様でなければ鳴りませぬ、
とばかりに博雅以外の誰が弾いても音を出さなくなる。
そして念願叶って博雅の元へ来ることができ、式神になるという。
いかにも博雅らしいお話。
博雅が、自然で式神を作ってしまう話
「花占の女」
夜毎、橘正忠が買ったばかりの邸にやってきて、菊の花びらをむしってその数を数える白装束の女の謎を清明が暴く
「龍神祭」
博雅がその昔、鬼と自分の笛を交換して手に入れた笛、葉二がなくなってしまい、それを探しに行く
「月突法師」
藤原兼家の邸にやってきて、庭にある松を切らないでほしいと懇願する法師は何者なのか。
「無呪」
都の守りである船岡山に住むこの世で一番古い神・混沌(こんとん)を、博雅の笛が目覚めさせてしまう
「蚓喰法師」
水を飲んでも飲んでも喉が渇く奇病を癒して回る法師の招待を清明が明らかにする
「食客下郎」
清明は博雅を通じて橘磐島に奇妙な依頼をする。
彼の病を治したければ山海の珍味、旨い酒をひと樽、磐島と同じ干支の生まれの牛一頭を用意してもらいたい。果たして病は平癒するのか。その病の原因は。「
「魔鬼物小僧」
寺のお堂に出る、いつまでも終わらず経を読み続ける小僧さんの幽霊の話。
経を読み終えるまでは観音堂から出てはいけない、という和尚の言いつけを守ったがために、
真念という小僧が火事で焼け死んだ。
実は真念が読まされていた巻子(かんす)は、初めと終わりが繋げられ、永遠に読み終わらないものだったのだ。
繋がれていた巻子を清明が切り分けてやると、真念の幽霊は嬉しそうに「終わりましたよ。読み終わりましたよ」
と言い、成仏したのだった。
「浄蔵恋始末」
“からくして思ひ忘るゝ恋しさを、うたて鳴きつる鶯の声”
唯一無二の名僧として知られる浄蔵から、安倍晴明のもとに恋文が届けられた。
40年の歳月を経てもなお、この恋文に秘めた自らの想いに悩まされる大徳を積んだ71才の名僧。
若かりし頃にたった2度だけ契った相手の行方をつかんだというのだ。老いて死期が近づく彼女に会うか、会わまいか。
名僧の迷いに安倍晴明が問いた鶯の存在とは!? 心がじんわりと温まる秀作。
全9編。
題名。夜光杯の巻というが、中身は夜光杯とは無関係
今作は、“楽師”博雅の活躍が目立った。
今回収められた作品のうち源博雅が吹く龍笛・葉二(はふたつ)の音が大きく関わる話が「月琴姫」「龍神祭」「無呪」の3つもある。
勿論博雅が、その際大きな役割を果たす。
それ以外の全ての作品でも、彼の笛は登場する。
堺市の中心で?を叫ぶ